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上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第九十四章
第九十四章 海送り第一号 「海へ送られた」 「最初の一人が」 「何をされたのか」 「そこから」 「聞きます」 新之介が。 そう言った翌朝。 米利堅側から。 一艘の小舟が来た。 乗っているのは。 老人。 一人。 通詞。 一人。 護衛。... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第九十三章
第九十三章 渡してよい名 「本人抜きで」 「渡すことには」 「私は」 「反対します」 新之介が。 そう言った時。 兄。 新三郎は。 すぐには答えなかった。 鼠色の帳面。 子替帳。 その中には。 名。 顔。 声。 歩き方。 傷。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第九十二章
第九十二章 母の選び ――新之介を。 ――御影へ渡さない代わりに。 ――新三郎。 ――そなたを。 ――差し出した。 お澄の手紙。 その一行は。 夜が明けても。 新之介の頭から離れなかった。 兄。 新三郎も。 ほとんど眠っていない。 榊... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第九十一章
第九十一章 兄の名 「そなたには」 「兄がいた」 宗次郎の言葉は。 新之介の耳へ入った。 だが。 意味になるまで。 少し時間がかかった。 「いた?」 「ああ」 「死んだと」 「聞かされた?」 「ああ」 「誰に」 宗次郎は。 答えない。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第九十章
第九十章 父の名 「生まれ名――榊兵庫」 その一行を。 新之介は。 何度も読み返した。 間違いではない。 写し違いでもない。 海の向こうにいる男は。 そう答えた。 役名ではない。 借りた名でもない。 生まれた時から。 榊兵庫。 「... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十九章
第八十九章 役を降りて帰る者 三艘の小舟が。 江戸城へ向かっていた。 一艘目。 堀田新三郎を名乗る男。 二艘目。 阿部伊勢守を名乗る男。 三艘目。 徳川家定を名乗る男。 だが。 その三人の生まれた名を。 新之介は。 まだ知ら... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十八章
第八十八章 戻る場所 一番船へ向かう小舟の中。 黒川玄斎は。 竹吉を。 何度も見た。 見て。 目を逸らし。 また見る。 「先生」 「何だ」 「そんなに見られると」 「顔に何か」 「ある」 「何が」 「十二年」 竹吉は。 少しだけ笑った... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十七章
第八十七章 海の玄斎 「黒川玄斎」 その名を読んだ後。 新之介は。 しばらく紙を折れなかった。 十二年前。 米利堅へ。 榊原新之介を名乗る男が。 黒川玄斎という日本人を。 引き渡した。 そして。 その時。 今ここにいる新之介も... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十六章
第八十六章 代表という役 翌朝。 江戸城では。 誰を「徳川将軍」として米利堅側との会議へ出すか。 それだけで。 話がまとまらなくなっていた。 「家慶甲殿」 「当然だ」 阿部伊勢守。 「なぜ」 家定が問う。 「現在」 「将軍として最も長... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十五章
第八十五章 記録を殺す者 江戸へ戻る舟は。 来た時より速かった。 だが。 新之介は。 一度も。 「急げ」 とは言わなかった。 水野が何度か船頭を見る。 そして。 何も言わない。 新之介が気づいた。 「水野様」 「何だ」 「今」 「急...