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上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十九章
第八十九章 役を降りて帰る者 三艘の小舟が。 江戸城へ向かっていた。 一艘目。 堀田新三郎を名乗る男。 二艘目。 阿部伊勢守を名乗る男。 三艘目。 徳川家定を名乗る男。 だが。 その三人の生まれた名を。 新之介は。 まだ知ら... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十八章
第八十八章 戻る場所 一番船へ向かう小舟の中。 黒川玄斎は。 竹吉を。 何度も見た。 見て。 目を逸らし。 また見る。 「先生」 「何だ」 「そんなに見られると」 「顔に何か」 「ある」 「何が」 「十二年」 竹吉は。 少しだけ笑った... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十七章
第八十七章 海の玄斎 「黒川玄斎」 その名を読んだ後。 新之介は。 しばらく紙を折れなかった。 十二年前。 米利堅へ。 榊原新之介を名乗る男が。 黒川玄斎という日本人を。 引き渡した。 そして。 その時。 今ここにいる新之介も... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十六章
第八十六章 代表という役 翌朝。 江戸城では。 誰を「徳川将軍」として米利堅側との会議へ出すか。 それだけで。 話がまとまらなくなっていた。 「家慶甲殿」 「当然だ」 阿部伊勢守。 「なぜ」 家定が問う。 「現在」 「将軍として最も長... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十五章
第八十五章 記録を殺す者 江戸へ戻る舟は。 来た時より速かった。 だが。 新之介は。 一度も。 「急げ」 とは言わなかった。 水野が何度か船頭を見る。 そして。 何も言わない。 新之介が気づいた。 「水野様」 「何だ」 「今」 「急... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十四章
第八十四章 国の代替 「誰にも」 ジョナサン・ケイは言った。 「頼まれていない」 黒船の高い舷から。 江戸湾を見下ろしながら。 「だから」 「私は」 「そなたたちと同じ間違いを」 「したのかもしれない」 新之介は。 すぐには答えなかった。... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十三章
第八十三章 三十一番の名中立の舟は。 江戸湾の真ん中で。 ゆっくり揺れていた。 日本側。 榊原新之介。 徳川家定。 水野隼人正。 鷹見宗一郎。 記録役の清太郎。 通詞。 米利堅側。 士官二名。 通訳。 弥十郎。 そして。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十二章
第八十二章 海の御影 江戸湾から響いた砲声は。 しばらくして止んだ。 だが。 日本橋のざわめきは止まらなかった。 「戦になるのか」 「米利堅だってよ」 「黒い船が四隻」 「浦賀が焼かれたらしい」 「いや、品川まで来てる」 「将軍様が逃げた... -
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上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十一章
第八十一章 千の声 夜が明けきる前。 日本橋には、もう人がいた。 魚を運ぶ者。 荷を担ぐ者。 店先を掃く者。 寝ていない火消。 橋の袂で茶を沸かす女。 江戸という町は。 将軍が一人か二人か分からなくても。 朝になれば動く。 「不... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十章
第八十章 最初の偽名 「松平左京」 捕らえられた男は言った。 「始帳に残る家斉公の署名は」 「そなた自身の筆だ」 川風が吹く。 消え残った三つの灯りが揺れる。 松平左京は肩の傷を押さえられたまま、男を見ていた。 「……何を申している」 「忘...