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上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十八章
第四十八章 千人の声 蔵前へ近づくにつれ、鐘の音は一つではなくなった。 北から。 西から。 川沿いから。 町の辻ごとに別々の鐘が鳴り、それぞれの場所で人の声が上がっている。 「米を出せ!」 「御蔵を開けろ!」 「隠した米を民へ返せ!」 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十七章
第四十七章 声を持たぬ舟 小名木川の水門を抜けると、流れが急に速くなった。 潮が引き始めている。 文吉の早舟は、その流れへ乗って東へ逃げていた。 新之介たちの舟との距離は、二十間ほど。 遠くはない。 だが追いつける距離でもなかった... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十六章
第四十六章 偽りの上意 御船蔵へ向かう舟は、川幅に似合わぬほど小さかった。 池守から借りた舟を人足に担がせ、不忍池から東の水路へ下ろしたのである。 舟に乗ったのは、新之介、半九郎、源太郎、矢倉勘蔵。 櫂を握るのは、近くの船宿から呼び... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十五章
第四十五章 白煙の弁天堂 不忍池の水面を、白い煙が這っていた。 霧に似ている。 だが朝の冷気から生まれたものではない。 水へ触れた草が黒ずみ、岸辺の小魚が腹を上へ向けて浮かんでいる。 煙を吸った鴨が一羽、水面を激しく羽ばたいた。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十四章
第四十四章 火薬蔵の炎 火矢は、火薬蔵の屋根へ深く突き刺さっていた。 矢尻には油を含ませた布が巻かれている。 炎はまだ掌ほどだったが、乾いた板へ舌を伸ばし始めていた。 「梯子を!」 新之介が叫ぶ。 「井戸から水を運べ!」 役宅の者たち... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十三章
第四十三章 死者の声 水野隼人正の役宅へ入った時、新之介は刀を取り上げられなかった。 玄関には海防掛の高梨勘兵衛。 廊下には南町奉行所の同心。 部屋の前には戸田家の家臣。 さらに西徳寺から来た若い僧が一人、数珠を手に座っている。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十二章
第四十二章 死者の筆跡 伊助の舟は、夜の大横川をゆっくり進んだ。 松波屋から遠ざかるにつれ、崩れた蔵の音も、水へ落ちる材木の音も聞こえなくなった。 それでも誰も口を開かなかった。 お志津の膝には、濡れた『花仕入』の主帳。 開かれた頁... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十一章
第四十一章 第五の帳面 門の外に立っていた女は、三十を少し越えたほどに見えた。 鼠色の小袖。 黒い頭巾。 足元には旅の泥がついている。 相模屋の娘と聞いて新之介が思い浮かべた、裕福な商家の女主人とは違った。 供もいない。 駕籠もな... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十章
第四十章 井戸の底の第一冊 再起館へ近づくにつれ、煙の匂いが濃くなった。 火事ではない。 火薬。 湿った土。 そして、焼けた縄の匂い。 新之介たちは町角を曲がった。 再起館の門前に、戸田家の家臣が二人倒れている。 一人は肩から血... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第三十九章
第三十九章 「海」の字の下 街道寺を出たのは、丑の刻を少し回った頃だった。 月は雲に隠れ、道は暗い。 提灯の明かりは足元までしか届かず、その外側には田畑と林の影が広がっている。 新之介。 玄斎。 半九郎。 源太郎。 大場。 青山...