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上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十七章
第六十七章 政をつかさどる者 高札の最後の一行を、清太郎はもう一度読んだ。 「――本日より、一時政務を預かる者を置く」 そこで一度息を止める。 「――鷹見静山」 再起館の広間に、重い沈黙が落ちた。 玄斎が最初に口を開いた。 「……誰だ」 誰... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十六章
第六十六章 二人の家慶 門の外にいる男も、徳川家慶の顔をしていた。 左脇腹へ手を当て、 「二十年前、曲直瀬玄朴。そなたが残した針だ」 と、同じ声で言った。 再起館の中にいる家慶が、ゆっくり門へ近づく。 二人の距離は十間ほど。 白灰で... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十五章
第六十五章 死んだ将軍 高札の写しを前に、徳川家慶はしばらく黙っていた。 ――将軍徳川家慶、本日薨去。 自分の死を告げる文字。 しかも江戸城から出た正式な高札だという。 「上様」 町方の同心が恐る恐る呼ぶ。 家慶が顔を上げた。 「その... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十四章
第六十四章 将軍という御影 馬は再起館の門前で横滑りするように止まった。 乗っていたのは、西徳寺から来た篠田弥兵衛だった。 額も袖も煤だらけ。 右手には、濡れ布に包まれた紙。 「榊原殿!」 「根帳の残りですか」 「はい!」 「誰が見つけ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十三章
第六十三章 二つの火 石室の中で、誰も動かなかった。 かち。 始帳を載せた台の下から、小さな音。 かち。 そのたびに、直之助の顔から血の気が引いていく。 井戸の上では。 堀田新三郎の腹に、火薬が巻かれている。 同じ刻で動く仕掛け... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十二章
第六十二章 始帳 井戸の底から、冷たい風が吹き上がってきた。 再起館の裏庭。 井戸の縁には、新之介、玄斎、半九郎、志乃、清太郎。 少し離れて家慶。 御影宗太郎。 千代。 四十七番。 誰もすぐには下りなかった。 「下りてこい」 底... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十一章
第六十一章 二人の静山 再起館へ向かう道すがら、新之介は一度も口を開かなかった。 夕刻。 江戸の空は赤く染まり、その下を黒い煙が細く流れている。 西徳寺の火。 日本橋の騒ぎ。 江戸城から消えた将軍。 そして――。 鷹見静山。 海に... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十章
第六十章 一つの答え 根帳の扉は、すでに半ばまで開いていた。 西徳寺の地下へ降りた新之介は、その前で足を止めた。 石造りの広間。 中央には四つの鉄箱。 第一冊。 第二冊。 第三冊。 第四冊。 その向こうに、九十一歳の御影宗伯。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第五十九章
第五十九章 将軍の顔 日本橋の向こうから、葵の紋が近づいてきた。 先頭に槍持ち。 その後ろに徒歩の供侍。 さらに白木の長持。 そして中央。 黒塗りの駕籠。 葵の紋は大きく、遠目にも分かる。 「道を開けろ!」 役人らしい男が叫んだ。... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第五十八章
第五十八章 二人の新之介 地上から響く声は、地下にいても分かった。 「榊原様だ!」 「新之介様が御高札場へ上がったぞ!」 「米蔵を開けると!」 新之介は走り出した。 「出口は!」 「西徳寺へ戻るより、この先だ」 御影宗伯が杖で右の通路を指...