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鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第二十五章(完)
第二十五章 水の底の名前 題名を変えた朝から、水音は遠くなった。 消えたわけではない。 蛇口をひねれば水は出る。 雨が降れば屋根を打つ。 風呂場では排水口が鳴る。 だが、あの呼ぶような音はしなくなった。 ポタ。 ポタ。 誰かが暗... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第二十四章
第二十四章 水槽の女 水は、忘れたものを返す。 忘れなければ、ただ流れる。 悠真はその一文を、何度も読み返した。 佐伯亮が残した最後の言葉。 いや、本当に佐伯亮の言葉だったのかは分からない。水の底で拾われ、HDDの中に浮かび上がった言... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第二十三章
第二十三章 祠の下 石段は、家の下へ続いていた。 悠真の実家は、どこにでもある古い二階建ての家だった。床下に地下室などない。まして、石段があるはずもない。 だが、仏間の床板の下には確かに暗い穴が開き、その奥へ苔むした石段が続いている。... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第二十二章
第二十二章 最初の母 母からの着信だった。 新潟港の待合室で、悠真はしばらく画面を見つめた。 母。 その文字が、やけに遠く感じられた。 佐伯も気づいていた。 「出てください」 悠真は通話ボタンを押した。 「母さん?」 返事はなかった... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第二十一章
第二十一章 七番タンク 船の下から、海が上がってきた。 ざああああ。 ざああああ。 それは波音ではなかった。 巨大な生き物が、船腹を内側から舐め上げているような音だった。 悠真は、真帆の手から受け取った鍵を握りしめた。 タグには、... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第二十章
第二十章 流れる水 山の中で、波の音がした。 ざあ。 ざあ。 ざあ。 都路の集落に海などない。 見えるのは杉林と畑と、低く垂れ込めた雲だけだった。 それでも、音は確かに聞こえた。 遠くではない。 足元からだった。 土の下。 納... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第十九章
第十九章 押した者の家 都路へ戻る道は、前日よりも暗く見えた。 朝であるはずなのに、山の稜線には灰色の雲が低く垂れ込めていた。レンタカーのフロントガラスには、細かな雨粒が張りついている。 運転席に佐伯。 助手席に悠真。 後部座席に宮... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第十八章
第十八章 先生へのテープ 電話の向こうで、爪音が続いていた。 カリ。 カリ。 カリ。 老いた女性の息遣いが、その音に重なって聞こえる。 『修一さんは、まだあそこにいるのね』 悠真はすぐに訊いた。 「今、どちらにいますか」 『会津です。... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第十七章
第十七章 狭い場所 床下から、爪を立てる音がした。 カリ。 カリ。 カリ。 古い木を引っかく音ではない。 もっと硬いもの。 陶器か、コンクリートか、あるいは錆びた鉄の内側を、爪で削っているような音だった。 悠真はペンを握ったまま... -
鈴木光司
鈴木光司を模倣し、エリサ・ラム事件モチーフにした完全オリジナルホラー小説『水槽の女』第十六章
第十六章 まだ生まれなかった名 雨は、山道を静かに濡らしていた。 悠真と佐伯は、貯水槽から少し離れた杉林の中で足を止めた。背後から、赤ん坊の泣き声がまだ聞こえる。 かすかに。 だが確かに。 水の底から響くような声だった。 「三沢由美...